TCAミュージック・サロン 専科エンカレッジコンサート / 宝塚バウホール
9/8(土)に実施されました専科エンカレッジコンサートの昼公演に行ってきました。一度はじっくりと拝見したいと思っていました専科の方々中心のステージを、念願叶って観ることができました。
まず、当日の曲目をご紹介します。
第一部
第二部
このように、ジャズのスタンダードからシャンソン、ミュージカル・ナンバー、さらには最近の曲にいたるまで幅広いジャンルで構成されています。これらをベテランの専科の方々が演じるのですから、非常に卓越したステージでした。今覚えている範囲で、感想を書いていきたいと思います。
- 京三沙さん
これまであまり本公演でのお姿は拝見したことがなかったのですが、娘役らしい可憐な雰囲気を漂わせるステージでした。選ばれた曲目も第一部では、中村中(なかむらあたる)さんの曲、第二部ではアンジェラ・アキさんの曲と現在活躍中のアーティストの作品でした。特に中村中さんの曲は、私は今回初めて聴いたのですが、ご本人が性同一性障害を公表されている方で、戸籍上は男性の方だそうです。選ばれた理由は確か、曲を聴いて純粋に感動されたからということだったと記憶していますが、現在のポピュラーミュージックにも関心を寄せ、積極的にそれを自身のステージに取り入れようとされている姿に感動しました。その歌唱は、素朴ながら儚く美しく、宝塚の娘役ならではの可憐なものでした。
こちらは中村中さんご本人(ですよね?)による『友達の詩』
- 箙かおるさん
黒燕尾服を着た箙さんを初めて見ました(笑) その歌唱は相変わらず声量があってダイナミックなものでした。特に私にとってはやはり思い入れのある曲『エピローグ〜リボンの騎士より〜』が心に残っています。姿は変わっても歌唱は1年前と同じ。曲の間奏で一回ターンするところも再現してくださいました。感無量。…他の皆さんが第二部ではタキシードに着替えられてたのに、箙さんだけご自身が歌うまでは燕尾服だったと思います。何かこだわりを感じました。
- 萬あきらさん
そのダンディさは、これまで舞台で拝見したのと変わらない姿でした。今回はエリザベートの『愛と死の輪舞』を渋く歌ってくださいました。そして次の『Little Boy Blue』でのダンディさはちょっとやそっとでは太刀打ちできないぐらいの格好良さでした。
- 磯野千尋さん
有名なスタンダードからの選曲。『So In Love』はミュージカル『Kiss Me,Kate』の曲で、あの『日曜洋画劇場』のエンディングテーマだったやつです(そういえば皆さん分かると思う) これは同日行われたTCAスペシャルでも星組・娘役トップの遠野あすかさんが歌われてましたね。それから余りにも有名な『サマータイム』など熟練かつ洗練された歌唱を聴かせてくれました。
- 一樹千尋さん
今回の曲の中では、第二部の『星から降る金』が心に沁みました… これはミュージカル『モーツァルト!』の中の曲だそうで、冒頭の語りから切々と歌い上げる姿が感動的でした。…この曲はモーツァルトがウィーンに行くことに反対する父レオポルトを説得する男爵夫人が歌う曲で、『愛とは解き放つこと…』という歌詞が深く心に響きました。
なお、ミュージカル『モーツァルト!』は今年の11月から年末にかけて帝国劇場で再び上演されます。(公式WebページURL http://www.tohostage.com/mozart/top.html) 帝劇では同じく宝塚歌劇のOGである香寿たつきさんと涼風真世さんが男爵夫人のWキャストで、この『星から降る金』を歌われます。(公式Webで少しだけそのシーンが見られます) 都合がつくなら、このミュージカルも観に行きたいと思いました。あとこのミュージカルは『エリザベート』と同じ「脚本ミヒャエル・クンツェ&音楽シルヴェスター・リヴァイ」コンビによるものですね。
- 矢代鴻さん
もうこの方については、改めて言うことはないでしょう。宝塚歌劇を代表するシンガーだと思います。曲はジャズ・シャンソンなどを披露されました。普通にBlue Noteとかで歌われてても不思議じゃないですよね。ご自身は「賞味期限ギリギリまで歌わせていただきました」なんておっしゃってましたが、ギリギリどころかバリバリじゃないですか。これからもその素晴らしい歌唱をずっと聴かせて欲しいと思います。
- 立ともみさん
次の花組公演をもって退団されることが決定しています。その背景もあって『マイ・ラスト・ダンス』は胸に沁みました。隣の方は泣いてました(私はなんとかふんばりましたが…)
立さんの今回のステージの姿からは、これまでの宝塚歌劇の舞台生活の中で刻まれた全ての心をもって、観客の私達に訴えかけてくるようでした… 30年以上も舞台の上で演じられた方の、そこで培われ刻まれた技術と心。それらは本当にその年月を経たからこそ、まさに成熟した魅力となって観客の心に響くものとなっているのではないでしょうか… 長期にわたって熟成されたワインが、至高の芳香と味わいをもたらすように、深く私の心を揺り動かすものでした。
そしてラストの『ラ・マンチャの男〜ドルネシア』の迫力は、もう圧倒されました。まさに宝塚歌劇の男役ここにありという感じでした。(ちなみに『ラ・マンチャの男』も有名な松本幸四郎さん主演で2008年に上演予定です(http://www.tohostage.com/lamancha/index.html)宝塚歌劇OGの月影瞳さんも出演されます)
と、いうわけで全ての魅力を、私の拙い文章では到底伝えきれませんが、とにかく素晴らしいステージでした。…ちょっと表現は適切でないかもしれませんが、正直このコンサートを\3,500-で観ていいのか、とも思いました。でも私はそれこそ本当の意味で『プロフェッショナル』だと思います。チケットに設定された価格以上の価値を観客に感じさせるステージを披露できるのが、本物のプロだと思います。
いや、本当に幸福な時間でした。ありがとうございました。
p.s.
高橋愛も先日のディナーショーで、『夢から醒めて』の歌唱一発でチケット代分の価値を感じさせてくれたが、秋コンではどうなのかな…