星組公演 ミュージカル『ロミオとジュリエット』 / 梅田芸術劇場メインホール
『ロミオとジュリエット』はシェークスピアの非常に有名な戯曲で、過去に様々な形で上演され「四大悲劇」としてもう古典となっているものです。宝塚歌劇でも過去に水夏希主演でも上演されています。
さて今回の『ロミオとジュリエット』ですが、その有名な戯曲をフランスの演出家であるジェラール・プレスギュルヴィック氏によってミュージカル化されたものの上演となっています。しかしこれがなかなか斬新なものでした。通常、ミュージカルというと『オペラ座の怪人』とか『エリザベート』とか歌とセリフが交じった演劇を想像しますが、このフランスのミュージカルは現地では「スペクタキュル」というジャンルに配置されるものとなっており、「歌・ダンス」が常に融合したものとなっています。つまり常に歌い踊りながら物語が進行していくといった印象です。宝塚歌劇でいうところのレビューにさらにストーリーとセリフの要素が濃くなった感じでしょうか…
振付もKAZUMI-BOY氏をはじめ三人の方が担当されていますが、それぞれのシーンで効果的な振付だったと思います。
シェークスピア作品というと、どうしても仰々しいセリフとか古臭さを感じてしまうことがありますが、今回の『ロミオとジュリエット』はそんなこともなくラストの展開も美しく、若い男女の古典的な悲恋を斬新なスタイルで描き出した秀作だと思います。またそれを表現しきった星組メンバーも素晴らしかったです。一つ欲を言えば印象的なミュージカルナンバーがもう少しあればさらに良かったかと。
ではキャストごとの感想を
- ロミオ/柚希礼音
こういう歌とダンスが融合したミュージカルだとダンサーとして定評のある礼音ちゃんの才能がさらに際だちます。純粋な愛に生きて死んでいくロミオの儚さ美しさを華麗な立ち回りとそれに融合した演技で表現していて申し分なかったです
- ジュリエット/夢咲ねね
華やかで美しく物語のヒロインとしてこちらも申し分なかった。基本的にジュリエットのキャピュレット家は赤を基調とした衣装ですが、それもよく似合ってました。
- ティボルト/凰稀かなめ
ロミオの恋敵ですが、やっぱり立ち姿から美しいです。こちらもその一途な愛ゆえに自身に悲劇が降りかかる運命ですが、ロミオと比較してその情熱的な様がよく表現されていて良かったです。
- ベンヴォーリオ/涼紫央
ロミオの親友。こちらも物語が進行していくなかで重要な役回りですが、いつもどおり堅実な表現力で演じられていました。あの金髪ショートもすごく似合っていて良かった。
- マーキューシオ/紅ゆずる
ロミオの親友ですが、こちらは熱い気持ちが溢れ出す存在。それをまた持ち前の演技力で劇的に演じられていて良かったです。特に二幕の自身で悲劇を招いてしまうところの表現は今回の舞台の一つの見どころで非常に良かったです。
- 乳母/白華れみ
ジュリエットの乳母ですが、このれみちゃんの存在感もまた良かった。言ってみれば、れみちゃんもジュリエットを演じてもいいような存在ですが、今回の物語でも重要な役どころの乳母を価値ある演技で表現しきっていたところは本当に素晴らしいと思います。
その他のキャストではロレンス神父を演じた組長さんも、相変わらず良い役で良い演技で印象的だったとか、専科の一樹千尋さんも相変わらず歌上手いなーとかいろいろありますが、一つ採り上げたいのは今回のミュージカルではロミオとジュリエットそれぞれにまつわる愛と死の運命を表現するのに、「愛」と「死」と名付けられた二人のダンサーが割り当てられています。両者はセリフがなく、それぞれのシーンで演者と対になって登場しその運命をダンスで表現していくのですが、この二人が非常に舞台演出の効果を発揮していて良かったです。
「死」は若手で定評のある真風涼帆くん。「愛」は礼真琴さん …真風くんは知ってるけど、この「愛」の礼真琴さんが良かったよー …すごくしなやかな踊りで、ジュリエットのロミオに対する愛を重なるように表現していて印象的でした。特にラストで二人が悲劇の結末を迎えるシーンは非常に美しく、さらにこの「愛」がその二人に重なって幻想的な美しさを醸し出していました。
調べてみると、なんと男役さんで（劇中の「愛」は女性の姿です） 研2じゃないですか！ しかし音楽学校首席ですか。いやーこれからが楽しみな存在ですわ、博多座でも要チェック！ こういう若手を見つけられるのも本公演以外の醍醐味ですね。
と、いうわけで今回の星組『ロミオとジュリエット』は非常に素晴らしい作品でした。まだ梅田芸術劇場で26日までやっているので、興味の出た方は是非御観劇をお勧めします。（…チケットが残っているかは確認してませんが（＾＾；）
今日はこのあと雪組の貸切公演を観に行ってきます。
