花組公演「銀ちゃんの恋 - つかこうへい作『蒲田行進曲』より - 」 / シアター・ドラマシティ

二日連続で花組公演を観てきました。今回の作品は、有名な つかこうへい氏 の原作によるものです。映画の方はかなり昔に観たことがありますが、この花組の舞台もその映画をベースに作られている感じで劇中のいろんな場面で映画のシーンがところどころ脳裏に蘇ってきました。

この作品には非常に個性的なキャラクターがたくさん登場します。プライドが高く破天荒だけれど心弱い所もある映画スター・倉丘銀四郎や、その子分格の大部屋俳優のヤス、かつては大女優だったけれど今は落ち目の女優・小夏など、こういったアクの強いキャラクターを花組メンバーがどこまで豊かに表現できるかというところが一つの見どころだと思います。

この二日間観劇した感想として、その主要な三者を演じた方々はそれぞれ自分の持ち味を発揮して、役を自分のものとして各々のキャラクターを演じきっていたと思います。

作品全体としては、笑いあり涙ありの人情劇になっており、つかこうへい氏の映画や原作を知っている人にも十分満足できる内容になっているのではないでしょうか…　途中、シリアスなシーンに余計なギャグが入っているところもありましたが、石田先生の作品にしては下品な下ネタも無くｗ、すっきり観れました。

なんといっても今回は演者の熱演ぶりが光ります。特に華形ひかるファンは必見ですよｗ　では演者ごとの感想を…

• 大空祐飛（倉丘銀四郎）

銀ちゃんは、今回はゆひたんが演じます（＾＾）　私なんかは銀ちゃんというとどうしても風間杜夫の顔が浮かんでくるんですが、なかなかあの派手でメチャクチャな大スターを上手く演じていたと思います。セリフ回しがちょっと早口になったり詰まったりすることがありましたが、「スター」特有の思いこみの激しさなんかは良く出ていました。舞台の演出で、カメラを通した映像が舞台上のスクリーンに映し出されるシーンでも、きっちりカメラ目線を決めるところの表情とか、ラストの電飾を担いで出てくるところでも笑わせてくれました。…ただ芝居ではちょっとヤスに食われたところもあったかなあ…（＾＾；　まあ元々原作もどっちかというとヤスが主人公っぽいストーリーでもあるし、しょうがないですかね。

• 野々すみ花（小夏）

私が彼女のファンだということを差し引いても、芝居のレベルの違いを感じました。今回の小夏という役は往年の大女優という役で、実年齢が高橋愛とほぼ同じである彼女にしてみれば、どちらかというと、この舞台の役では小夏よりも朋子の方が適しているわけです。小夏という役は、例えば専科のまゆみ姉さん*1が演じてもいいような役どころなわけですが、それをほとんど違和感なく演じきってしまっているところが素晴らしい。…と、いうより恐ろしいとさえ感じました。
どうして二十歳そこそこの彼女が、あそこまで「女」を演じることができるのか…　まあいろいろ映画を観たり前回の舞台映像*2を観たり、研鑽を重ねた結果だと思いますが、あの「乗り憑った」かのような演技は天性のものという気がします。高橋愛もそういう素質を持った存在だけど、やっぱり私はそういう実力を持った人に魅せられるのよねえ…（＾＾）

芝居だけじゃなく歌の方もそつなくこなしているし、本当に将来が楽しみな存在です。

• 華形ひかる（ヤス）

いや〜今回はもう大熱演でした。『舞姫』のときの芳次郎も良かったけど、今回のヤスはさらに好演でした。ヤスという役どころは、映画に懸ける純真な心意気や小夏への優しさ、銀ちゃんを慕う一途さといったところを表現して観客の心を掴まないといけないわけですが、がっちりその心を掴む演技だったと思います。特に階段落ち前夜の小夏との葛藤シーンは、野々すみ花に負けず劣らない演技で心に迫るものでした。いや〜芝居巧者だね、みつるくん（＾＾）　映画ではヤス役は平田満さんでしたが、みつる繋がりってことでｗ

• 真野すがた（橘）

プログラムの写真も、舞台の姿もそのまんま「竜馬伝」の坂本龍馬なわけですがｗ　冒頭で新撰組の沖田総司とキスするとか石田先生にやりたい放題されてるなあと思いましたｗ　でも舞台上では長身を活かして立ち姿も美しく、銀ちゃんのライバル役である橘の存在感が出ていてよかったです。

• 華耀きらり（朋子）

下級生のすみ花ちゃん相手にこの役は結構、気が引けたんじゃないかと思いますが（＾＾；　舞台上ではそんなこともなく、アーパーな朋子の存在を違和感なく演じていました。きらりちゃんも元が可愛いから全然OK（*＾＾*）

• 邦なつき（ヤスの母）

いやあ、これは素晴らしかった。前作でも同じ役だったそうですが、九州弁のお母さんの演技が素晴らしかったです。やっぱりこういう方が舞台の要所を締めてくれると舞台の価値がさらに上がります。

その他は、姫花ちゃんの玉美も笑わせてくれたし、マメちゃんもいつもどおりアクの強い役で面白かったんだけど今回は周りが同じぐらい濃かったんであまり目立ってませんでした（＾＾；　チャーくんもこれで最後だけど助監督役をきっちり演じていました。

と、いうわけで今回の「銀ちゃんの恋」は、石田流・人情劇を花組メンバーがしっかりした芝居で応えた作品となっております。熱い芝居を観たい方には特にオススメ（＾＾）

・その他いろいろ

• 舞台セットに貼ってある「昭和残侠伝」ポスターの健さんがシブすぎるｗ　…でも健さんは松竹じゃなくて東映だろｗ*3　昔、ビデオで借りてシリーズ全部観ましたｗ

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• 焼肉屋のシーンでも「ハチノス 150円」とか「上ミノ 250円」とかが気になるワタシ（＾＾；　ビール250円は安いとｵﾓﾀ（時代背景を反映した値段かｗ）

• その焼肉屋のシーンの「豆もやし」が本物でしたｗ　マジで食ってるのが面白かったｗ

• 二幕でウェディングドレス姿のすみ花ちゃんが綺麗だった（*＾＾*） これでシンデレラ the ミュージカルの高橋愛と並んで、今年は私がファンである二人のウェディングドレス姿を観ることができました。

*1:五峰亜季さん

*2:今作は過去に一度宝塚歌劇・月組で上演したものの再演

*3:でも考えてみたら、『蒲田行進曲』自体の舞台が東映だよね（＾＾；　なんでだろｗ