宙組公演 Musical entertainment『Paradise Prince（パラダイス プリンス）』/グランド・レビュー『ダンシング・フォー・ユー』/ 宝塚大劇場
昨日に初日を迎えた宙組公演を観に行ってきました。今日はS席だけど、ほとんどSS席に近いところで観ることができました（＾＾）ﾗｯｷｰ …まず初めに、この公演から長らく怪我のために休演していた陽月華さんが復帰しました（＾＾） ウメちゃんおかえり〜♪ 怪我をした当初は、まさかこれだけ復帰までに長引くとは思っていませんでした。娘役トップになってからまもなくのことだったので、ご本人もかなり辛い思いをされたと思いますが、再び元気な姿が見られて良かったです。
さて、まず『Paradise Prince（パラダイス プリンス）』についてですが、「さすが植田景子先生！」と思いました。植田先生は現在の宝塚歌劇における演出家の中で私が最も好きな方です。この作品も植田先生によるものなので観る前から期待していましたが、その期待以上の素晴らしい作品でした。
植田先生の作品の何が素晴らしいかというと「宝塚歌劇の魅力を理解していること」だと思います。もちろん他の演出家の方々もそれは当然理解されていると思いますが、もともと宝塚歌劇のファンであった植田先生の作品には特に「ファンが求めているもの」がきっちり含まれていると思います。
今回の作品でも主演の大和悠河さんが演じるスチュアートは、モダンアート界のプリンスと呼ばれる存在で世間知らずのお坊ちゃんだけどキラキラの容姿と才能を持つ憎めない天真爛漫なキャラクターです。それはまさに“宙組のプリンス・大和悠河”にぴったりの役柄といえます。…当然これは植田先生が「当て書き」をして話を作っているからなのですが、その他の役柄もそれぞれ宙組の生徒の魅力を知り尽くした上で、それが十二分に発揮できるように作られています。なので観る側のファンにとっては、常に期待に応えてくれるものとなるわけです。
また、宝塚歌劇の本公演はショーと二本立てになることが一般的なので、一公演の時間が約一時間半と短くストーリーの起承転結を時間内に収めるのが難しい面があります。作品によっては尻切れトンボになったり、やたら説明セリフが出てきたりと話の展開が不適切なものも結構あります。でも今回の『Paradise Prince（パラダイス プリンス）』は、その短い時間の中でも上手くストーリーを展開させていて、夢に生きる主人公の直向きな姿とそれに関わるヒロインの純真な心を描きながら、観客に爽やかな感動を心に残すハッピーエンドストーリーになっています。
屋根裏部屋の夜空の星が見えるアトリエでのロマンチックなシーンや、「夢を現実にするのは人だ」というウォルト=ディズニーのセリフを象徴的に使うなど、演出・脚本にも秀逸な部分を感じました。またラストには謎解き部分まであるという趣向を凝らしたものとなっています。
このように今作品は、ベテランの宝塚歌劇ファンから初めて観劇する人にいたるまで全ての観客にお勧めできる内容になっていると思います。…穿った見方をすればそれは全て「お約束」であり、意外性のない平均的な作品であるともいえると思います。しかし、その「お約束」を全くべたつきもなく爽やかな魅力いっぱいの作品に仕上げた植田先生の力量は、やはり素晴らしいと思います。
なんかもう手放しで絶賛しちゃってますが、嘘は言っていないと思いますｗ さあ皆さん、劇場に足を運びましょう… そこには貴方をハートフルにする素敵な物語が待っています。
では、演者ごとの感想を。
- 大和悠河（スチュアート・グリーン・メンフィールド）
王子様ｷﾀｺﾚ（＾＾） いや〜星組のトウコさんがヒーローなら、宙組のタニさんはスターそしてプリンスだね、もうぴったりｗ アート界の栄光ある地位を捨てて自らの夢に生きる主人公… 正直で曇り無い心をもったスチュアートは360°どこから見ても魅力ある存在だ（＾＾） でも月収は700ドル、そこからさらに保険料と税金が引かれます。今日は結構、男声を意識した演技だったように思いましたが全体的に良かったです。チャリで登場もﾜﾗﾀ（＾＾）
アート界での活躍を夢みるヒロイン。可愛らしく華のある容姿はそのままにヒロインを等身大で演じられていました。月収は平均937ドル、スチュアートより多い。さすがに歌唱の方はブランクを感じさせる内容でしたが、日を追う事に良くなっていくと思います。…本当に復帰おめでとうございます。
ちょっと勘違いの入ったアートプロデューサー。一応今回の悪役にあたる役柄ですが、そこはほれハートフルストーリーですからあまりワルを感じさせないキャラクターになっています。らんとむさんにバラの花を咥えさせるところに植田先生のセンスを感じますｗ スーツ姿が格好良かった。月収は公表拒否。
- 北翔海莉（ラルフ・ブラウン）
オクラホマの大農場の跡取り息子。でもアニメヲタク（＾＾） とうもろこし似合いすぎ。「雨に唄えば」に続いてアクの強いキャラですが、そこはほれ、みっちゃんですからきっちり器用に演じて笑わせてくれますｗ 月収は？ でも実は… ここから先は観てのお楽しみ（＾＾） あいかわらず歌ｳﾏｰ
- 花影アリス（マーガレット・メンフィールド）
今回は主人公の妹役です。でもチョイ役じゃなくて、ちゃんと物語の中で筋の通った役になってる、さすが植田先生。そして兄の思いを影ながら支える妹をあいかわらず愛らしい姿で好演されています。
- 美穂圭子（ローズマリー・メンフィールド）
主人公の母。亡くした夫を想うあまり、その夢を息子に押しつけてしまう哀しい未亡人。…はぁ… 美穂姉様すばらしいです… 専科に異動されてから初めて拝見いたしましたが、素晴らしい歌唱もそのままに母親役を好演されています。専科の方は結構、老け役やるために特出してるように思われがちですが、今回の作品では同じく専科の一樹千尋さんと並んで印象深いシーンが用意されており、重要な役どころとなっています。 …そういうところも植田先生の素晴らしいとこなんだよなあ… 目先が隅々まで行き届いている。
あとこの作品で退団となる、たっちんもきちんとクローズアップされているし、その他の方々もそれぞれ適材適所な役になっています。それからもう一つ注記すべき点としては、今回の作品のメインキャラクターであるアニメの"Paradise Prince"は実際に一般公募を行って選ばれたものとなっています。（作者は、ふわ こういちろうさん） これは「夢を現実に！」がテーマであるこの作品に合わせて、植田先生みずからが企画されたとのことですが、こういったところも評価されるべき点と思います。
多くの人は子供の頃に見ていた「夢」を大人になるにつれて「現実」に向き合った結果、諦める事となるわけですが、それでも諦めなかった人にはそれが現実になることもあるという… なんかこの夏に行われたシンデレラ the ミュージカルと似てますね（＾＾）
そういう「夢の世界」が観られる場所… それこそが宝塚歌劇だと思います。…植田先生、やっぱりアンタ凄いわｗ チケット結構取っておいてよかった（＾＾）
あとショーの『ダンシング・フォー・ユー』は非常にオーソドックスな作りでした。オーソドックスすぎて途中眠くなるぐらいｗ でもラストのエトワールのたっちんの歌は素晴らしかったなあ… 宝塚の舞台ではもう聴けなくなるのかと思うと少し淋しいですが、絶対に退団後もその歌声は聴けるよね？ あの「天使の歌声」をまた別の舞台で聴ける日を楽しみにしています。
